高価な傘は使わない だって忘れてきたら嫌だもの

　朝、いつもの電車のいつもの車両に乗って、いつもと同じホームから降りたのですが、何をどうしたものやら、降車するその瞬間に傘を落としました。

　車両とホームの隙間に。

　そりゃあもう見事なホールインワンでした。音もなくスルリと隙間に消えてゆく、マイ傘（定価￥525‐）。


　　あ…
　
　　ま　いーや


　良くねえよ！！！！！

　何か起こるとすぐに「まいーや」で済まそうとするのが私の悪癖です。

　折しも梅雨に入ったばかり、今日も1日雨が降りましょう。

　急がんとバスが来る…と思いながら駆け、窓口のおばさんに助けを求める。


　ふろや　　「あのー、すいませーん、傘を、あー、その、そこのですね、レールに落と
　　　　　　　　してしまって…」
　おばさん　「あぁ、そうですか、ちょっと待ってて下さいね!」←すごく親切


　しばらく待つ　
　やがておばさんが何やらでかい器具を持ってくる　
　これでUFOキャッチャーの如く傘を拾い上げるのだろう


　ふろや　　「ここです、ここ」
　おばさん　「あー電車が出ないと取れませんねえ」


　この駅終点です
　この電車出るまで10分はありますよ
　そんなわけで


　おばさん　「帰りにもう1度来て下さい。お名前お聞かせ願えますか」←とても気さく
　ふろや　　「はい、わかりました、＊＊＊（ふろやの本名）と申します。有り難うござ
　　　　　　　　います！」
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　慌ててバスに乗る
　腰をおろして
　ま、しょうがねえやね、
　とか考えていると、


　　　　　　　「＊＊＊さ～ん!!」


　と叫びながらバスに乗り込んできたのは、あれ、さっきのおばさんだよ
　片手にあるのは1本のビニール傘
　それをこちらへ差し出して言うことには、


　おばさん　「これをお使い下さい」←めちゃくちゃ親切


　帰りがけ、忘れず傘を受け取りに行きましたが、朝のおばさんと違って、このおじさんは終始無表情でした。ちぇーっ。
　親切してもらって、「ちぇーっ」もないけどさ。